少年サッカーの練習方法や小学生にサッカーの試合のやり方を教えることは意外に難しいと感じている方は多いですよね。
サッカー経験者のお父さんでも(最近はサッカー経験のお母さんも増えました)小学生にサッカーを教えることは難しいと言います。
その根底にあるのは「自分にはできるのに、なぜ小学生ができないのかわからない」というものです。
自分だって小学生の頃はサッカーを覚えるのに苦労したけれど忘れてしまうんですよね。
それと、大人は成人としての骨格や筋力があるので「力」でやれるけど、小学生には「力」がないので大人のやり方ではできない。そこに気づかない人も多いです。
中学、高校サッカーを手本にしてみる
大人のサッカーの練習方法をいきなり小学生にとりいれることはメニューによっては難しいです。
中学サッカー、高校サッカーはどうでしょうか。
まだ発育発達の途上にある中学、高校サッカーの場合は、筋力にたよらないでトレーニングしているように見えます。
ところが、男子サッカーの場合は中学では走力のスピードと心肺機能の向上がテーマですし、男子高校サッカーの場合も筋トレは欠かせません。
プレーのためのというより当たり負けしないように、1対1のバトルで負けないようにという目的が大きいですね。
高校女子サッカーに注目してみる
そこで、高校女子サッカーに注目してみると蹴っているボールスピードや走るスピードも男子に比べると遅いです。
女子サッカーが男子サッカーに劣っているということではなく、男女の骨格や筋力の違いが出ているということです。
スピード、パワーの点では少年サッカーに近い存在ということが言えます。ただし、基本スキルはとても高度で、判断力、戦術は男子に劣りません。
高校女子サッカーを見ていると、ボール扱いにとても忠実でボール扱いが上手い選手が多いです。
そして、ロングボールを多用せず、グラウンダーのパスをつないで相手を崩していきます。
また、1対1の場面ではフェイントをしっかり使って抜きますし、男子サッカーのようにダッシュ力やボディコンタクトで相手をブロックするということも少ないです。
高校女子サッカーはマジで少年サッカーのお手本になる。
これは少年サッカーを指導しはじめた頃の私の実感ですが、周りのベテランコーチに聞いても同意見の方が多かったです。
常盤木学園と聖和学園
高校女子サッカーの強豪と言えば常盤木学園。そして常盤木学園のある仙台市には常盤木学園としのぎを削る聖和学園もあります。
なぜ、宮城県のしかも仙台市に高校女子サッカーの強豪が集まっているのか。
その理由は、個性的な指導者と指導方法にありました。
全国からその指導を受けるために集まってくるわけです。
常盤木学園と聞いて鮫島彩選手や熊谷紗希選手を思い浮かぶ人は男女問わずサッカーマニアですよね。
日本代表、なでしこジャパンが育つ環境を作るサッカー練習とはどういうものなのか。
指導者でなくとも興味があります。
聖和学園女子サッカー
聖和学園と常盤木学園が出場している試合を見に行ったり、練習を見学にも行きました。
けっこう見学する人々がいてびっくりしたものです。
聖和学園女子サッカーには国井精一監督という名将がいます。
国井監督はもともとバスケットボール出身で、バスケットボールの練習ノウハウをサッカーに応用して成功した方です。
国井精一氏は10年ほど前に
「国井精一 聖和学園 ゴールへのシナリオ〜Football is Elegant〜 全3巻」
を出しています。
バスケットボールはボールと周りを一度に見ることができる(同一視野に入れる)ことができるが、サッカーは違う。
ボールは足もとにあり、周りを見るためには顔をあげなければならない。ここにサッカーの難しさと楽しさがある。
この言葉を聞いた時に、私は背筋がゾクゾクしました。そうなんだ、ここに気づかないといけないんだ。そう思いました。
この3枚セットに収められているDVDには聖和学園の日々の練習が収められています。
私はこの練習内容をアレンジして自分のチームに取り入れました。
コンビネーションの練習にはとても参考になりました。
女子サッカーはとても基本に忠実です。男子のように筋力に頼ることがないので、練習メニューは中学生や小学生にもお手本になります。
私は自分のチームの選手たちにも女子サッカーの試合を見るように言っています。
・止める前に顔を上げる
・トラップの瞬間はボールを必要最低限見る
・パスをしたらその足で走り出す
・スペースがあったら走りこむ
・ボールを持っていたらスペースを切り裂くようにボールを運ぶ
・選手が動きながらスペースを作っていく・・・・
どれもが小学生のサッカーで小学生のうちに基本を身につけて欲しいスキルです。
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常盤木学園女子サッカー
聖和学園の国井精一氏のサッカーを勉強していくと、同じ仙台にある常盤木学園のサッカー練習に興味が湧いてきました。
常盤木学園の阿部監督は少年サッカーの指導経験もある方です。
なんと言っても鮫島選手、熊谷選手という、田中明日菜選手などなど、なでしこジャパンのレジェンドとも言える選手の出身高校です。
常盤木学園も基本はパスサッカーなのですが、阿部監督のこだわりである「周りを見る」というところが少年サッカーに取り入れたいと強く思っていました。
練習を見学に行ったり、youtubeで動画を見たりしましたが、聖和学園の国井精一氏のようにDVDで体系的に学びたいと思っていました。
その願いが叶って2020年に株式会社トレンドアクアからDVDが発売されました。
全国の少年サッカー指導者や、お父さんコーチ、お子さんがサッカーをやっている保護者の方々にぜひ参考にしていただきたいものです。
常盤木学園・世界基準のパスサッカートレーニング
~女子サッカー先進校にみる基礎からの育成~
常盤木学園阿部監督のDVDの効果がある人、効果がない人
小学生の参考になるとは言え、高校女子サッカーのトレーニングメニューです。しかも全国大会17回優勝のチームのメニューなので、はっきり言って高度です。
私がこのDVDを見て参考になる、練習に取り入れられる、選手に伝わると思えるのは次のような選手、指導者、保護者です。
・公式戦で地区大会予選を突破し都道府県大会出場に出ている。
・都道府県大会出場を目指してチーム強化に取り組んでいる。
・6年生が5人以上いて、3年以上の経験がある。基本はある程度できている。
つまり、個人技術というよりチーム力を上げていくことに取り組んでいるという前提です。
4年生以下の選手たちにはなかなか取り入れることは難しいでしょう。
パスワークの練習による上達が目的なので、最低でも4,5人の選手が試合中にパスを意識した動きができることや、キック、トラップの基本スキルがあることが前提です。
指導者においても、ロングキックを多用し、キックアンドラッシュでのサッカースタイルの場合は参考になりずらいです。
保護者においても、わが子に試合中にドリブル突破でチャンスメイクをして欲しいという要望を叶える内容ではありません。
チーム練習に取り入れることができる立場にある指導者や、チームコーチに進言できる保護者などに限定されるでしょう。
価格も個人で購入するには高いものです。コーチが有志で購入するか、チームでの購入が現実的かと思います。
中学の部活の場合は顧問の先生は自腹で購入するのでしょうか。部費が使用できるのであれば領収書も発行されるので検討されてはどうかと思います。
常盤木学園阿部監督のDVDを手にすることで・・・
なでしこの熊谷紗希選手が高校時代にこんな練習をしていた。その監督が考えたDVDだ。
小学生や中学生にとって、特に女子サッカー選手にとってはモチベーションを上げる材料になるでしょう。
しかし、本当の効果は次のようなものです。
・サッカーのパスワークに必要な本当の技術と判断力が身につく(選手の場合)
・今の練習方法に疑問があったが、常盤木学園の阿部監督の練習方法を知り疑問が吹っ切れた(指導者の場合)
・練習方法を疑うことなく、効果を期待して地道に指導することで選手たちの信頼を得る(指導者の場合)
・今のチーム力と常盤木学園のチーム力の違いを知ることで、今のチームに何が不足しているのかを知ることができる(指導者の場合)
・全国大会優勝のチームであっても基礎を大事にしていることを知る。魔法の練習方法はない事がわかり、地に足がついたサッカー選手になることができる(選手、保護者)
あの常盤木でもこんな基礎的な練習をしているのか。でも強い理由はなんだろう、よい選手が集まっているからに違いない。
よい選手を集めただけで17回の優勝やなでしこジャパンの選手を生み出すことはできない。
その理由を知ることで、サッカーがより楽しく、より身近に、より積極的に取り組むこができるでしょう。
常盤木学園・世界基準のパスサッカートレーニング
~女子サッカー先進校にみる基礎からの育成~