デュソー氏のインタビューその2
前回は、ドリブルのためのドリブルであってはいけない。という話をしました。
しかし、ドリブラーにはドリブルさせようとも話ました。
それは、ドリブルの質が違うからです。突破を意識したドリブルは、相手エンド
で、ゴールへつながる動きをイメージしています。
ドリブルのためのドリブルは戦術的な意識がなく、とりあえずポゼッション状態です。
フリーの味方を作る、スペースを作るという意図が感じられればそれば戦術的なイメージ
がある訳ですが、3回、4回と切り返すドリブルは実戦にはあり得ません。
ペナルティエリアのサイドで切り返しているうちに、あっと言う間に囲まれてしまうのが
現代のサッカーです。
今回は「組み立て」という事について書きますね。


日本代表のゲームを見ていても、デフェンスラインで横パスを回し、タイミングを見て
ボランチに当てたり、サイドに縦パスを送ったりという攻撃パターンがありますね。
ゲームを組み立てようとしている様子です。
子供たちも同じような事はできます。デフェンスラインでボールを回すことはできます。
自軍内でのパス回しは比較的容易に回すことができます。
組み立てを意識できているかどうか、このパス回しの様子を見ると判断することができます。
サッカーの本質は、相手ゴールにボールを入れることですから、ボールを縦に運ばなければ
なりません。自軍エンドでボールを回すことは、相手に取られにくいので、サッカーをしてる
ようですが、本当にそうなの?という事もあります。
縦にボールを入れると相手ボールに取られる、突破の手段が無い、ドリブルで切り込むスキルが
無い、奪われたくない。だから、自軍でボールを回す。
つまりデュソー氏は「簡単な事を選択するな」という事を言っています。
このように、簡単な事を選択すると次のような現象が起こります。
前を見る事をしないようになることです。遠くを探そうという意識で前を見ないと
3本も4本もデフェンスでボールを回すようになってしまうという事です。
さらに、デュソー氏は次のような事も言っています。ちょっと難しい表現ですが、一緒に考えてみましょう。
中盤がFWに早くくっつきすぎるという事です。
どういう事でしょうか。たとえば4バックだとしますね。その前には6人のフィールドプレーヤーが
いるわけです。
相手からボールを奪って攻撃に切り替えた瞬間に、その6人が横に一列に並んでしまうという事です。
よく、高さと幅とか、厚みと幅を作って攻撃しようといいますが、デュソー氏はその中盤を作ることと
言っています。
厚み、つまり、選手が真横に並んでしまうと、ラインの前後に無駄なスペースができてしまいます。
デュソー氏の講習会に出た時の事を思い出しましたが、選手が真横に並ぶ状態を鋭く指摘します。
「ありえない!」と通訳の方が指摘します。
中盤を使ってバランスよく組み立てていくためには、前後の関係のポジショニングが必要という事です。
スペースがありすぎるということは、ポジショニングのバランスが悪いという事になります。
さらに4つ目の指摘として、デフェンスがボール回しをした後、縦にパスを入れた時に、その後のプレー
が見られないという事です。つまり、パスして終わり、あとはカウンターに備えるというイメージです。
パスしたら、スピードアップしてボールに関わっていくとか、相手を引きつけるようなスペースへの走り込みとか、
デフェンスであってもクリエイティブな動きが必要であるという事です。
インタビュアーの布氏は次のように分析しています。
フォワードが流れて、真ん中が空くとMFはトップに並ぶように入ってしまうことがある。
また、ボランチもデフェンスラインに吸い込まれてしまう。
私も同様に感じています。
ジュニア、ジュニアユースのサッカーを見ていると、中盤省略の攻守が見られます。
つまり、ボールを持った選手からのパスが欲しい気持ちから横についてしまい、結果として並んでしまう
と言う事です。
デフェンスも同様で、守備的はMFの選手が相手ボールになった瞬間にセンターバックと並んでしまう
つまり、引いてしまうという事が見られます。
MFとはFWの一員でもないし、DFの一員でもない、MFなのだと考えています。
では、どのような事を意識してサッカーをすればよいのでしょうか。
360度から来るプレッシャーの中で、起点となるプレーをするためにはテクニック、個人戦術、状況の
理解が必要になってきます。
デュソー氏は日本人はボール扱いがうまいが、フットボールをしていないという指摘をしています。
具体的には、ポジション毎の分業になっているという事です。三列の分業と言う事ですね。
FW,MF,DFの分業が見られるという事です。
デフェンスが攻撃に関わっていく、FWが前線で守備をする、全員で攻守かかわっていく事が
フットボールだという事を言いたいようです。
ボランチというポジションについて、デュソー氏のコメントは次の通りです。
「日本のボランチはボールを奪えていない。フランスではボランチをボールを奪う人と呼んでいる」
このコメントを聞いて、ハッと思った方も多いのではないでしょうか。
例えば中田英選手がボランチをしていた日本では、かじ取り役がボランチのイメージでした。
現在の小学生や中学生にどこのポジションやりたい?と聞くと、足に自信のある子はほとんどが
ボランチかトップ下と言いますね。
日本では、ボランチというと攻撃的なイメージがありますが、世界では「ボールを奪う人」なのですね。
FC東京の今野選手などは、ボランチに起用されると「ボールを奪う人」になっています。
本人は、ピルロのようなプレーがしたいと言っていた事もありましたが、ボールを奪う、カバーに入る
能力は素晴らしいものがあります。渋く目立っていますね。
このコラムは「育成」つまり、代表チームの分析を行うものではないので、今、ジュニアやジュニアユース
では、どのような事を意識してトレーニングやゲームをしていかなければならないか、について書いています。
デュソー氏は子供たちの年代には、どんどん高い位置からボールを奪いに行かせるべきだ、と言っています。
でも、中学3年生までの子供達は守備があまり好きでなく、攻撃を好む傾向があります。ゴールを守る意識も
高いとは言えません。
高校生つまり16歳になってから守備を組織的に行うための指導が必要になると言っています。
育成年代に必要な提言は次の通りです。
「子どもたちにフットボールをさせる」
全員攻撃、全員守備だけれども、半分は守備をしなければいけない。
アカデミーの選手たちは、Jの下部チームと攻め合って5-6で負けた試合を振り返り、何がよいプレーか
という事をしらなければならないと言っています。
まずボールを奪いたい、攻撃できる時は攻撃する。攻撃を準備する。早く行ける時は早くする。
それがフットボールだ。
デュソー氏の言葉です。
優先順位は、楽しくフットボールをする事。よいプレーとは何かを知ること。よいプレーとは
「勝ちたいプレー」と思う事。
簡単にタッチラインを割らない、意図のないロングキックをしない、なども強調しています。
15歳までは攻撃、16歳からハードに当たりに行かせるという事でよいのではないか、と言っています。
私は、ここで考えました。
少なくとも私が生で見ている育成段階のサッカーは、結果を求めるあまり、分業は見られるし、ポジションの
固定化も見られます。
アカデミーでの考え方をわれわれ指導者達はどのように解釈して、現場に反映させるべきなのか。
子供たちがすくなくとも18歳である程度完成されたフットボーラーになるためには、各年代で身につけるべき
課題があるとともに、フットボールの本質を小さいうちから意識していくことが必要であることは言うまでも
ないと考えます。
アカデミーでは「持久力の向上」にも積極的に取り組んでいます。
現代サッカー、少年サッカーもそうですが、連続した攻守、ハードワークのためには「持久力」が必要です。
持久力をつけるというと、素走りをイメージしますが、ボールを使って持久力を上げる工夫をしています。
素走りの方が効率がよいことをデュソー氏は認めつつも、ボールを使って持久力を上げることにこだわっています。
インタビューにはありませんが、ここで、指導者に対しても「簡単な選択をしない事」を示唆しているような感覚を
受けました。
ボールを使って心拍数を落とさないメニューやオーガナイズを考えることは、難しいです。トレーニングの運営も
難しいものがあります。
グラウンドをぐるぐる走らせてタイムを図る事は簡単です。効果もあるでしょう。
どうでしょうか、育成に関わる立場のコメントを聞いて、我が子や我がチームの選手たちの事を考えると
何をすべきか。
デュソー氏の言う通りにすべきという事ではありません。デュソー氏の言葉を受けて、どういうサッカーをしていく
か、指導していくか、自分は何を伝えるべきか、という事です。
デュソー氏は子供たちを育成してプロに送る仕事のプロです。このような指導者が海外にはたくさんいます。
プロを目指す、サッカーが上達したいという事はどんなことなのか。一緒に考えていきましょう。
次回のテクニカルニュース30号にも連載が予定されています。